質問にお答えします! 〜聴き覚えで弾く生徒をどうしたらいいですか?

Q

 

聴き覚えでピアノを弾いて、楽譜を見てくれない生徒、どうしたらいいでしょうか?

楽譜が読めないときっと後で困ると思いますし、お月謝をいただいているのに楽譜が読めないのは申し訳ない気がします。

 

A

 

これはよくある質問ですね。

私もこれまでに、セミナーなどで何回も何回もお答えしてきましたが、

その時々によって答え方が変わる質問でもあります。

新米の頃には「困りましたね……譜読みさせるには……」

とか言っておりましたが、今は……。

 

答え方にはいろいろあるのですが、

今日は質問の意味を超えて(笑)お答えしてみようと思います。

ふざけているのではなくて、私は真剣です。

このような悩みをどう受け止め、解決していったらいいか、

「生徒をどうにかしようとする」前に、

もう少し頭を柔軟にして「自分の頭の中、自分の考え方を変化させる」ことで

解決の糸口がみつからないでしょうか。

 

そもそも、どんなにこの質問に答えても、このケースは減ることはありません。

聴き覚えで弾く子は減りません。

聴き覚えでピアノを弾く子供の中で、

読譜もできる子供の割合を上げていくことならできるとは思います。

 

「聴き覚えでピアノを弾く生徒」

なんだか、まるで悪いことをしているみたいではありませんか?

特に、この質問の中では、明らかに”悪い”イメージで

語られてしまうのですが、果たしてそうでしょうか?

 

「聴き覚えでピアノを弾ける生徒」

みなさん、これから、こう呼びませんか?

音楽は耳で聴くものです。

聴いただけでその音楽を覚えられる、

楽譜を見なくても弾くことができるって、

実は素晴らしいことではありませんか?

 

先生方の多くは耳コピが苦手で、

聴き覚えでピアノを弾くことができない人が多く、

楽譜を見てピアノを弾かせることが仕事だと思っている

(私も初めはそう思っていました)から、

その価値が理解しにくいのかもしれません。

 

これは、自分がそのように育てられたからそう思ってしまうというだけで、

新たなものの見方を獲得すれば見方も感覚も変わるかもしれないと思うのです。

 

ピアノの先生からはまるで音楽の邪道のように思われてしまう

「聴き覚え」ですが、プロの世界ではこれが結構大事です。

例えば、スティービー・ワンダーのレコーディングの様子をある方から聞きました。

まず彼が作ったばかりの曲を「こういう曲ができた」と演奏します。

すると、それぞれのミュージシャンが、

その1回の演奏から自分のパートは何をすべきか察して、

すぐにその場で音にしていくのだそうです。

ええ、楽譜なしに。

 

「聴き覚え」ができなければ、まるで歯が立たない現場ですね。

スタートラインがそこで、みなが聴いて理解した音楽を元に作り込んでいく。

メロディの特徴、コード進行、キメのリズム、音楽の行き方など、

聴いて覚える力を育てることはとても大切だと

実感できるエピソードではないでしょうか。

 

「聴き覚え」のレベルについても考えてみましょう。

これは、音楽の総合力が試される、ということでもあるのです。

一度聴いただけで、音楽の特徴をどこまで捉えられるか?

あの、いわゆるメロディ聴音とか4声を書き取るとかではなく、

音楽としてどこまで瞬時に再現できるかと言われたらどうしますか?

 

ね、聴き覚えで弾いてしまう子達って凄い力を持っていると思いませんか?

 

例えばジャズのアドリブの応酬も、相手が使ったメロディの特徴を踏まえて、

それを真似したり逆さまにしたり早回しにしたりもじったり、

高さを変えたり飾りをつけたりとったりと、

今そこで生まれた相手の音楽に反応していくわけです。

 

書いてあることを正しく弾くことも大切で素晴らしいことだけれど、

書いてなくても音楽ができることもまた素晴らしい。

 

「聴き覚えでピアノを弾ける生徒」に出逢った先生方は、

その能力を封印して、ただ読譜を強制していくのではなく、

この力を生かしてさらに伸ばしながら、

「聴き覚えができる上に、読譜も得意になった生徒」を誕生させるべく

頑張ってみる!というのはいかがでしょうか?

 

長くなったので今日はここまでにしますが、現実に今、

私が取り組んでいるのはこのテーマです。

このつづきは、またどこかで!

 

樹原涼子

  • 2018.08.13 Monday
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